コワーキングスペースのコミュニティエンゲージメント向上支援を行う株式会社funky jumpは、都内のコワーキングスペースを対象に新型コロナウィルス感染症の影響下における営業状況についてアンケート調査を行いました。
都内では新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、東京都より不要不急の外出自粛が要請されています。その中で多くのコワーキングスペースも影響を受け、イベントの自粛やオンライン化、来場者の手指消毒などの対策を実施しています。そういった尽力の一方で、自粛に伴う売上減や会員の退会などが発生している状況もあります。今回の調査では、各コワーキングスペースが行う対策ついての情報共有を目的としています。コワーキングスペースにとってこれらの内容が、これからの運営を乗り切るための参考となれば幸いです。
調査方法
WEBサイト「コワーキング.com」の情報をもとに、都内コワーキングスペースから351件を対象とし、問い合わせフォームやメールアドレスへアンケートを依頼しました(2020年3月31日)。その結果、4月5日現在までに30件の回答をいただきました。また複数のスペース運営者様へのヒアリング調査も実施しました。
調査結果
回答いただいたアンケートを元に、新型コロナウィルス影響下でのコワーキングスペースの状況や対策について以下4つの観点でまとめました。
・新型コロナウィルス対策
・イベント運営
・利用者とのコミュニケーション手段
・利用者数
多くのスペースが新型コロナウィルス対策を行っている
新型コロナウィルスの対策については、多くのコワーキングスペースで何らかの対策が実施されています。一方で対策を講じていないスペースも少数ありました。消毒薬が入手困難な状況などが要因として考えられます。コワーキングスペースへの個別のヒアリングでは、いつも以上に換気を徹底すること、必要最小限のスタッフ数で運営を行うことなど、多くのスペースで三密を避けるための活動がなされています。
また、イベントの新規受付の停止や開催中止、ドロップイン会員の利用停止は売上に直結する要素です。にも関わらず各コワーキングスペースは、感染拡大防止のためこれらの対策を取らざるを得ない状況です。ドロップインは全体の3分の2程度のスペースで売上を構成する要素となっていることや、在宅ワークが難しい方々の受け皿としてのスペース需要もあり悩ましい決断に迫られています。
運営者だけでなく利用者も一体となってウィルスを持ち込まない、消毒・マスク着用に協力する体制を整えるのが重要です。
ヒアリングの中で「出張をしている人や他の地域から来た人達の利用を制限するかどうか」という悩みも伺いました。最後は事業判断となりますが、決定後の情報の伝え方も含め多角的な検討が必要となります。
イベント運営はオンライン開催が主流になりつつある
感染拡大防止のために、可能な限りイベントはオンラインで開催することが望まれます。半数のスペースがイベントを完全オンラインに移行しています。
その他の内容は「主催者に任せている」「イベントによって対応はまちまち」ということでした。これにはコワーキングスペース自体の性格も影響していると考えられます。利用者を募集する手段の一つがイベント運営の場合や、他の事業と組み合わせている場合はイベントの開催自体を取りやめるという選択肢は難しいようです。
オンラインでイベントをする上ではZoom(オンラインビデオ会議アプリ)が主流ですが、その他にも「Remo」など新しいサービスも紹介されています。
オンラインへ移行する前に、運営者にとって使いやすいツールを探してみるのも効果的です。ヒアリングのなかでは、実際のイベントで使う前に一度社内で試してみることで、使用感について様々な気付きがあったという声もありました。
コミュニケーション手段が多様化してきている
オンラインでコミュニケーションを取っているスペースは全体の約7割にのぼりました。
一方、特にコミュニケーションを取っていないスペースも4分の1程でした。
サブスクリプションモデルの事業では使っていない期間に解約率が上がってしまうということが指摘されており、実際「新型コロナウィルスが落ち着くまで…」ということで月額契約を解除している利用者の話も聞きます。
解約したユーザーは再度顧客獲得コストがかかる、他の類似サービスと真剣に比較検討するといわれているので解約が発生しないような施策を行うのが重要です。
ヒアリングの中でオンラインコミュニケーションを取っているスペースに利用者の声を訊いてみました。「在宅ワークであっても仕事・家族以外の人と気軽にコミュニケーションを取りたい」「他の会社が頑張っているのを見ると頑張れる」「コワーキングスペースが元気だと嬉しい」という声が届いているとのことです。
利用者の減少
スペースの利用者減少が起こっています。
外出の自粛だけでなく企業からスペースの利用は控えるよう指導がされていること、スペース自体が行っている利用制限によるもの、年度を跨いだことにより元々退会予定だった会員が減り、入会しようと思っていた会員が様子見をしていることも考えられます。
ほとんどのスペースで利用者が減少し、またその減少幅も非常に大きい結果となりました。売上の構成内容にドロップインが入っているスペースもあり、売上への影響が懸念されます。
まとめ
アンケート、ヒアリングを通してスペースが以下の苦しい状況に置かれていることがわかりました。
・ドロップイン、イベント会場費の売上減
・会員の離脱、地域外から帰ってくる新型コロナウィルスを持ち込まないませないための施策をどこまでやるべきか
一方でスペースが新型コロナウィルス状況下において行っている活動には以下のものがありました。
・新型コロナウィルスを持ち込まないための消毒、換気、利用者の距離を空けるなどの対応
・会員の離脱防止策
・オンライン(イベント、SNSによる)コミュニケーションの実施
最後に
アンケート調査、ヒアリング調査を行ってスペース運営者の尽力が見えてきました。
現在の状況下では平常時におけるリモートワークよりもずっと厳しい、防疫のためのリモートワークを多くの人々が行っています。在宅での仕事は孤独感を増したり、家族の存在や気持ちの切り替えなどがうまくいかない、wi-fiが遅いという声も耳にします。
では、在宅ワークに負けないコワーキングスペースの価値とはなんでしょうか。良い椅子、静かな作業空間、早いwi-fi。単純な場所売りでしたらそれでいいのかもしれません。しかしコミュニティを前面に押してきたスペースにとっては、その真価が問われている時です。ただのスローガンだったのか、この苦境をみんなで乗り切るため互いに支援をしあえるのか。苦しいときほど力を発揮するのがコミュニティなのです。
funky jumpはコミュニティテックカンパニーとして真に役立つコミュニティ構築の支援をしていきます。